X線アレイ検出器
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著者:Orren Tench
当初
1980年代、ゲルマニウム検出器は、X線用途で大きな有望な存在となり始めました。 これは、AEA HarwellのJohn Howes氏によって最初に個人的に提案され、Canberra Industriesが先駆者として行った検出器形状の革新と、その後の電位窓の革新の結果として生まれました。Canberraによる後者の研究は、ゲルマニウム検出器は(熱電子が逃げるために)約3keV以下のピークが極めて非対称に発生するのが自然であるという一般的な見方を根本的に変えました。Canberra LEGe検出器の背面電極は小さく、ゲルマニウム検出器がシリコン検出器よりも本質的に優れた分解能であることを実証しました(単純に統計データを考慮した場合に、keVあたりの電荷キャリアが多いため)。ゲルマニウム検出器が低エネルギーで歪みピークを自然に生成するという考えは、Canberra Ultra-LEGe検出器とその独自の窓電極が出現したことで、誤りであることが証明されました。
Canberraは、この新しいエキサイティングな技術をフルに活用する立場にありませんでした。なぜなら、同社は、放射線検知とこの分野のさまざまな用途に完全に焦点を当てていたからです。弊社は長い間にわたって、原子力に注力していましたが、かつては有望だったX線製品ラインは、1970年代初頭に放棄されました。この機会に、一部の技術についてはX線会社にライセンス供与し、当該の検出器をOEMに供給し始めましたが、販売量は控えめな水準にとどまりました。
1980年代半ば、ブルックヘブン国立研究所でEXAFS(拡張X線吸収ファイン構造)実験を行っているシュルンベルガーの若い科学者、 Stephen Cramer博士が弊社にアプローチしました。Cramer博士は、EXAFSアプリケーションでは、希薄なサンプルで非常に重要となる妥当な計数率を達成するためには、複数の素子を持つ検出器が絶対に必要になると私たちを説得しました。さらに、彼には新しい「アレイ」検出器を作るための予算を提供していたため、9素子のLEGe検出器を作ることを提案しました。9台のGe X線検出器を近接した状態で一度に作動させることは、Canberraでは前例がなく、おそらく他社でもそうであるためリスクが高いことは分かっていました。事業の展望についてほとんど知識がなかったため、Cramer博士に価格を提示したところ、驚くべきことに彼はあと4個の素子を追加して合計13個にするのに十分な資金はもう持っていると言ったのです。こうして13素子Geアレイ検出器が誕生し、Canberraでは "triskaideckaphobia"(13という数字に対する恐怖症)の対策をしていたにもかかわらず、この検出器は10週間ほどで製造され、納品されたのです。
この検出器の導入は、シンクロトロンコミュニティ内でかなりのセンセーションを引き起こし、すぐにSSRL、Daresbury、およびその他の米国、ヨーロッパ、日本の多くの放射光源関連企業から同様の検出器の注文が寄せられました。お客様の中には低エネルギー動作を必要としているところもあり、こういったお客様には、窓なしクライオスタットの有無に関わらず、当社のUltra-LEGe検出器を提供しました。最終的に、オリジナルのパルス光リセットプリアンプは、電子リセットプリアンプ(現在のI-TRPs)に代わることとなり、より大きなアレイに対する需要を踏まえて、最大32素子を持つ検出器の製造へとつながりました。
シンクロトロンコミュニティのユーザーの中には、最大サイズのCanberraディスクリートアレイ検出器に満足しておらず、より多くのチャネルを要求するところもありました。これは2つの理由から、やや非現実的です。まず、32を超える離散素子すべてを単一のアレイで一緒に動作させることは、技術的に非常に難しいということです。2つ目は、大きなアレイの立体角は非常に大きくなるため、検出器をターゲットの近くで操作した場合、最も外側の素子はほとんど効果を発揮しない点です。
MIRIONランゴルサイムの施設
幸い、フランスのランゴルサイムにあるMIRION(旧EURISYS Mesures)特殊検出器施設には、ゲルマニウム検出器の電極をセグメント化する手段を提供する技術があります。このセグメンテーション技術は、単一のGe基板内に複数のピクセルが形成される、当社のモノリシック型Geアレイ検出器の基礎そなる技術です。5mm×5mmのピクセルサイズでは、100チャネルを約50mm×50mmの領域内に詰め込むことができます。さらに大きなピクセルを形成することも可能で、その場合はそれに応じて全体の面積も大きくなります。同様に重要な点は、モノリシック検出器の製造にはゲルマニウム1枚のみが必要となることで、より大きなアレイの製造が現実的になります。
1998年、日本に所在する「Spring 8」の大柳博士から、ランゴルサイムに初めて100ピクセル検出器が注文されました。この注文以来、ランゴルサイムでは、さらにいくつかの100ピクセル検出器と、より少ないピクセル数の検出器を製造しています。最もよく注文されるサイズは36ピクセルです。
ディスクリートアレイ検出器と同様に、性能も長年にわたって向上してきています。最新の技術革新の1つは、内蔵された同期リセット回路であり、これにより、一部のアプリケーションでは、極端に高い磁束が発生する(発生することで、動作させたままで放置するとシステムが麻痺する可能性がある)特定のチャンネルを、ユーザーが無効にすることができます。SAFEと呼ばれるこの機能は、事前にプログラムされた計数率制限によって自動的に有効にすることも、作業者がチャネルごとに選択することもできます。
モノリシック検出器では通常、電荷共有を減少させてピーク対バックグラウンドを改善するために、プリアンプと内部コリメートの同期リセットが必要となります。MIRION100ピクセル検出器のデータ取得率は、市場の他のどの検出器の中よりも優れています。
MIRIONは現在、3~100ピクセルを持つモノリシックアレイ検出器と、最大32チャネルのディスクリートアレイ検出器の両方を提供しています。